塗料の商品名は意外と奥が深い ― ダイヤムキムキ事件と“ネーミングの罠”
塗料の商品名は意外と奥が深い ― ダイヤムキムキ事件と“ネーミングの罠”
塗料業界では、性能・規格・耐久性といった要素ばかりに注目が集まりがちですが、実は「商品名」が思わぬ波紋を呼ぶことがあります。その象徴ともいえるのが、かつて恒和化学工業(後のダイフレックス、現シーカ・ジャパンに統合)が発売した無機有機複合塗料「ダイヤムキムキ」です。
カタログ表紙には筋肉の写真が掲載され、明らかに「ムキムキ」の語感を狙った、完全に「筋肉ムキムキ」からのネーミングであることを裏付けていました。営業マンのM氏もノリノリで「ムキムキ!」とアクションをつけながら販売店へ案内していたほどです。
性能そのものは非常に優秀な外壁仕上材であったにもかかわらず、やはりそのネーミングは攻め過ぎ(?)でした。
「ムキムキじゃ提案できない!」――発売直後からクレーム続出
販売直後から、設計事務所・建設会社・施工店の担当者から次々にクレームが寄せられました。
- 「こんな名前、役所に提案できない!」
- 「お客様に提出する提案書に“ムキムキ”は無理!」
- 「真面目な高性能塗料なのに名前で損している!」
商品性能とは無関係な部分が、ビジネス上の障害となってしまったのです。結果、発売からまもなく正式名称は「ダイヤスーパームキ」に変更されました。中身は同じでも、名前だけ“社会に出せる表現”に修正されたわけです。
ノリノリだったM氏は、もちろん落胆。「どんだけムキムキが好きだったんだよ」と心の中でツッコんでしまいました。塗料業界では非常に珍しい、ネーミングが原因で急遽改名された事例として、今も笑い話のように語り継がれています。
ネーミングが原因でトラブルになったのは塗料だけではない
実はこのような「商品名トラブル」は、他業界でも数多く発生しています。言葉の意味や文化的背景によって、意図しないイメージを与えてしまうケースがあるためです。
自動車業界の例 ― パジェロとフィットの“名前問題”
三菱自動車の名車「パジェロ」は、スペイン語圏では下品なスラングを連想させるため、現地では「モンテロ(MONTERO)」として販売されました。
ホンダ「フィット」についても、開発段階の名称は「フィッタ(Fitta)」でしたが、北欧の古語で女性器を意味する語と判明し、発売直前に急遽変更されたという逸話があります。
飲料業界の例 ― カルピスは英語圏でCalpicoへ
日本でお馴染みの「カルピス」。英語圏では「Calpis」が「piss(おしっこ)」を連想させるため、北米では「Calpico」という名称で展開されています。
このような例からも、ネーミングが商品イメージ、そして販売戦略にどれほど大きな影響を与えるかがよく分かります。
塗料の商品名は“機能性・用途・カテゴリ名”が基本。その裏には…
塗料の名前は、性能や用途を分かりやすく伝える必要があるため、以下のような傾向があります。
- 無骨で機能的な名称
- 技術用語ベースのネーミング
- カテゴリーが連想しやすい名前
しかしその裏には、表に出ない「ボツ案」「黒歴史ネーム」、担当者が冷や汗をかいた企画名などが、実はたくさん眠っているのかもしれません。
「ダイヤムキムキ事件」は、単なる笑い話ではなく、“性能だけでなく、名前ひとつで市場の反応が大きく変わる”という事実を教えてくれる象徴的なエピソードだと言えるでしょう。
まとめ ― 名前は性能を超えて市場に影響を与える
ダイヤムキムキの事例から分かるように、どれほど優れた材料でも、商品名が市場に受け入れられなければ成立しないという現実があります。
塗料のネーミングは地味に見えて、実は奥が深い世界。もしあなたが提案書を作る際に不思議な名前の塗料を見かけたら、その裏にある“ドラマ”を想像してみると、少しだけ業界が楽しく見えるかもしれません。
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