2025.01.09

NAD塗料でできること!その特性と塗装のポイント

NAD塗料は、水性塗料の手軽さを保ちつつ、溶剤塗料並みの高い仕上がりや耐久性を得られる次世代型の塗料として注目を集めています。従来の水性塗料よりも広範囲で優れた効果を発揮しやすい一方、まだ新しい技術であるため、具体的な特性や活用方法を知らない方も多いかもしれません。塗装の仕上がりや作業環境への配慮を大切に考える場合に、NAD塗料を候補に加えることで、より満足度の高い塗装結果を得られる可能性があります。

NAD塗料の基礎知識

NAD塗料とは何か

NAD塗料は「Non-Aqueous Dispersion」の頭文字を取った略称で、「非水系分散」と呼ばれる技術に基づいています。とはいえ完全に水が使われていないわけではなく、水性の利点を取り入れながらも、溶剤塗料に近い光沢や硬度を実現できるように配合されています。水と樹脂の相互作用を巧みにコントロールすることで、乾燥後の膜が強靭かつ美しい外観を保つ設計になっているのです。

これまでの水性塗料は、室内や人の目につきにくい場所など、比較的においや健康リスクを抑えたい場面で好まれてきました。一方、溶剤塗料は屋外の外壁や金属部など、耐候性や光沢が求められる部分に多く使用される傾向がありました。NAD塗料はそれぞれの長所を両立するハイブリッドな位置づけとして開発が進められています。

基本成分と仕組み

NAD塗料では、水を含みつつも、樹脂の分散を工夫することで溶剤塗料に近い機能を持たせています。具体的には、ポリマー粒子を微細にして水に分散させる過程で、溶剤成分が少量添加されることが多いです。この結果、粒子同士が乾燥時にしっかり結合し、硬い塗膜を形成できます。粒子サイズの制御や添加物の選定が重要で、ここがNAD塗料の研究開発の核心といえます。微粒子化した樹脂が均一に並び、高い密着性と光沢感を示すのです。

また、NAD塗料によってはアクリルやウレタンなどの樹脂が採用され、それぞれに異なる特徴が付与されます。アクリル系であれば紫外線に強く色あせしにくい、ウレタン系であれば弾性に優れるなどの性質が期待できます。塗布面の目的に応じて樹脂の種類が決められるため、施工する場所や環境条件を踏まえた選択がカギとなります。

NAD塗料の特性

耐久性と仕上がり

NAD塗料は水性塗料でありながら、溶剤塗料のように硬く滑らかな塗膜が得られやすい特徴があります。外壁や屋根など、高い耐候性が求められる箇所にも十分対応できるといわれており、長期間にわたり美観を保ちやすいです。光沢仕上げや半ツヤ仕上げなど、多様な質感を表現できる点も人気の理由です。

粒子間の結合が密であるため、防汚性や付着力も高水準で、雨風による汚れや経年劣化を最小限に抑えられます。近年の塗料開発では光沢の持続性や耐用年数の延長も進み、実際の使用現場でも溶剤塗料に比肩しうる仕上がりが報告されています。

環境への配慮

NAD塗料は水性塗料の範疇に入るため、溶剤塗料ほど揮発性有機化合物(VOC)が多くありません。においも比較的抑えられ、屋内や住宅が密集する地域での施工でも周囲に配慮しやすいのがポイントです。環境負荷を低減する意味でも、水性塗料の需要は年々高まる傾向があり、NAD塗料はこうした時代の要請に応える存在といえるでしょう。

施工者の安全性という観点でも、水性塗料であることがプラスに働くケースは少なくありません。もちろん塗料の種類や保護具の使用状況にもよりますが、有機溶剤の含有量を必要最小限に抑えた製品が多いため、作業時のストレスやリスク軽減が期待できます。

高い密着力と施工性

NAD塗料は水性塗料ならではの低臭気・低VOCという環境面での安心感と、溶剤塗料に迫る光沢や硬度を兼ね備えている点が特長です。健康面や近隣への配慮をしながらも、仕上がりにこだわりたい方には大きな魅力となるでしょう。

加えて、塗膜の密着力が高いため、下地との相性が合えば外壁や屋根、木部まで幅広く使える柔軟性を持ちます。屋根や外壁など広い面積を塗り替える際にも乾燥時間が比較的短いため、天候に恵まれれば効率的に作業を進めやすいです。さらに、溶剤塗料に比べて火災リスクが低く、保管や廃棄もしやすい点も評価されています。

NAD塗料の選び方とポイント

塗装対象への適合性

NAD塗料を選ぶ際には、塗装対象物の材質や使用環境をよく確認し、求める機能や仕上がりを明確にしておくことが大切です。コンクリートやサイディング、金属、木材など、さまざまな下地に対応できる製品がありますが、防水性を強化したいのか、光沢を重視したいのかなど、どこを優先したいかで選ぶべき樹脂タイプが変わってきます。

メーカーによって推奨用途やグレードが異なるので、塗装会社と相談するときは「どの部位に、どんな性能が必要か」を具体的に伝えましょう。屋根なら耐熱性や撥水性を重視、外壁なら耐候性や美観を重視、といったように部位ごとのニーズに合わせて選定していくと、失敗を防ぎやすくなります。

塗装前の準備

NAD塗料で塗装する前には、下地処理をしっかり行うことが重要です。汚れや油分、チョーキング(白亜化)を落とす高圧洗浄やケレン作業を怠ると、高品質な塗料がきちんと密着しない恐れが生じます。面倒に思えても、この工程が仕上がりや耐用年数に大きな影響を与えるため、入念な下地処理は欠かせません。

また、NAD塗料は水性塗料の特性上、気温や湿度に左右されやすい面があります。極端に寒い日や湿度の高い日に施工すると乾燥時間が長くなり、性能を十分に発揮できないことも。メーカーや施工会社の推奨条件を確認し、できるだけ安定した環境で作業を進めることが大切です。

NAD塗料の注意点

一方でNAD塗料は、製品ごとに含まれる溶剤や樹脂の比率が異なるため、必ずしも全ての場面で万能というわけではありません。塗装箇所の素材や使用条件を正しく理解し、適切な製品を選ばなければ、その性能を活かし切れないこともあります。塗膜硬化前の水やホコリの影響を受けやすいのも、水性塗料ならではの弱点と言えます。

また、溶剤塗料よりも厳密な施工管理が必要とされるケースもあるでしょう。特に、気温が低すぎると乾燥不良が起きやすくなるため、仕上がりにムラや光沢低下が生じる恐れがあります。メーカーが推奨する気温(たとえば5℃以上など)や湿度の範囲を守り、適切な方法で作業を進めることが欠かせません。希釈剤の種類や添加量も製品ごとに異なるため、取扱説明書の指示を守りましょう。

まとめ

NAD塗料は、水性と溶剤の両方の長所をうまく取り入れた次世代型の塗料で、環境面や作業性にも大きなメリットがあります。乾燥後の塗膜は硬く光沢があり、耐候性にも優れることから、外壁や屋根など幅広い場所に適用可能です。一方で、気温や湿度への配慮、塗料ごとの特性を踏まえた下地処理や施工手順が求められる点には注意が必要です。

最適なNAD塗料を選ぶためには、目的や使用環境を明確にし、信頼できる施工会社と相談のうえで製品の特徴を比較検討することが大切です。より良い仕上がりと快適な施工環境の両立を目指すなら、NAD塗料を検討してみる価値は十分にあるでしょう。環境にも人にもやさしく、機能性も高いNAD塗料は、今後ますます注目されていくに違いありません。