2024.05.13

各種データからみた業界と必要な改革とは?①

近い将来現実のものとなる建設業界の絶対的な労働力不足に対して警鐘が鳴らされてからずいぶん経ちます。

年が変わるごとに新しいデータが発表されますが、良い兆しは見えません。

見えない中でも歳月は過ぎていきますので対策を考えていかねばならない時期に来ています。

ネットで検索すると様々なデータ、レポートが出てきますので大量の情報を得る事が出来ますが、来たるべき労働力不足に備えて「こうすべき」と言われても出来ることと出来ないことがあります。

出来ることでもすぐに取り組めるのかは企業によって差があるでしょう。

今回は様々なデータから「取組み始めなければいけない事柄」について考えてみました。

■データからみる建設業界就労者の現状

まず建設業界の現在の状況について各種データより抜粋してみました。

「募集しても応募がない」「採用したが退職してしまった」などの理由で、自社で労働力不足を感じている方も多いのではないでしょうか?

建設労働者数は今後も減少が見込まれ、また現職のベテラン勢の引退も増えていきますので、労働力確保に向けて早急な整備・改革が望まれます。

・2022年の建設労働者数は通年平均で前年より6万人減の479万人(全産業に占める割合は7.1%)

⇨就労者数のピークである1997年の685万人の69.9%(建設技能者だけでみると同年ピーク時の65.7%)

・2022年の時点で55歳以上の建設業就業者が全体の36%、反対に29歳以下の就業者は12%

・「2025年問題」2025年には、建設業界での働き手が最大約90万人不足するといわれている。

・建設業の外国人就業者数は2020年で11万人を超えているが、約7割は技能実習生であり就労継続には条件がある

・プラスの要因と思われるのは新規学卒者の入職者数が2014年以来4万人台をキープし続けていること

 

■建設業界のイメージ

まず建設業界のイメージについてまとめてみます。

屋外作業が多い厳しい労働環境や過去の批判的な報道等の影響から、建設現場には「3K(きつい、汚い、危険)」に代表される負のイメージが根強く残っています。

実際に2014年厚生労働省調査での建設業離職者の離職理由には「休みが取りづらい」「作業に危険が伴う」がそれぞれ3位、5位となっており、これらに加えて「雇用が不安定」「遠方作業が多い」「労働に対して賃金が安い」「キャリアアップの道筋が描けない」といった点も挙げられています。

また日経コンストラクションが実施した「身近な若者や自分の子どもに建設業界への就職を勧めるか?」という調査では、建設業界に身を置く回答者の約半数が「勧めたくない」と回答しています。一般からみた建設業のイメージも「きつい」「危ない」が1位2位、4位には「厳しい」が入っていますが、これらネガティブな部分とは別に「1つのことを極めている」「クリエイティブ」「かっこいい」などのポジティブな見方もあります。

この3つは実にふわっとしており多分に主観的ではありますが、ある意味、建設業の本質と就業者の魅力を示しており、採用に向けての重要なヒントになります。

 

■建設業界の「良さ」と就労に際しての不安点

前項にもあるように建設業に関してのポジティブなイメージは、実は若者たちの仕事選びのポイントに合致する部分が多くあります。

2023年2月、株式会社ウィルパートナーズによって行われた15歳から39歳までを対象とした「技能職に関する若者意識調査」によると、職業選択時に重視する項目では「好きなことを仕事にしたい」「やりがいを感じたい」がいずれの年代でも1位2位であり、「職人の仕事に魅力を感じるか?」という問いにも肯定的な回答が2/3を占めています。

肯定的な回答をした若者が「魅力を感じる理由」としては「手に職がつけられる」「技術が優れている」という回答が各年代とも半数または半数を超えており、しかも年代が高くなるにつれ上昇している傾向があります。

私自身も「今の自分に他に語れるような技術や技能はあるのだろうか?」と自問自答した経験があり、技能職をうらやましく思ったことがありました。

しかし、いざ「自分の仕事として選択したいですか?」 という問いになると、肯定的な回答は半分を切ってしまいます。

これは様々な不安が就業を躊躇させてしまうということで、考えられる不安の要因について改善を試みていかない限り就業希望者は増えていかないということです。一般的に言われる不安点は以下の通りです。

・休日が少なく就労日数が多い ・1日の労働時間が長い ・給与が低い ・収入が不安定

・福利厚生の有無 ・キャリアアップの道筋が描けない ・昔ながらの慣習から脱していない

・・・など

企業によってバラつくと思いますが、いずれもよく言われている問題です。

就労形態に関することは言わば「業界標準からの完全脱却」を意味するもので、実現には思い切った経営判断が必要です。

★★②へ続く・・・