2024.05.16

各種データからみた業界と必要な改革とは?②

■何をすべきなのか・・・

ここまでにも触れさせて頂きましたが、建設業の就労者不足の問題は深刻です。

就業者不足が現実に起こっている今、何をしなければならないのでしょうか?

一般財団法人建設経済研究所のレポートに実に分かりやすい記述がありましたので引用させて頂きます。

☆『他産業と同様に、建設業においても、これまでの「典型的な人材(=日本人の男性で、フルタイム勤務かつ転勤や残業の要請に対応可能)」を見直して、担い手の対象を広げていく必要がある。

特に、「性・年齢・国籍」の異なる人材である「女性、高齢者、外国人」を担い手として積極的に想定し、確保・育成に取り組んでいく必要がある。

例えば、女性も担い手の対象として想定すると、15~29歳の若年の労働力人口は、男性のみの606万人から、男女込みで約2倍の1,160万人となる。

その上で、これまで想定されてきた人材(若年男性)にも、この新たに想定される人材(女性、高齢者、外国人)にも建設業が選ばれるよう、建設業の魅力を高め、建設業への入職と建設業での就業継続につながる環境を整備していかなければならない。』

(2020年建設経済レポート No.72 ©RICEより)☆

今回は人材採用と定着のために、就労形態変更などの経営判断を伴う大きな変更以外で何をすればいいのか、について考えていきます。

「建設業の魅力、自社の魅力を正しく伝えて、夢を持てる環境を整備する」ということになります。

 

■自社で取り組む改善点は?

上記レポート内の「建設業の魅力を高める」ことにつながるのは「自社の魅力の整備と積極的なPR」であり、「建設業への入職と建設業での就業継続につながる環境整備」とは「受け入れて働き続けてもらうための準備」です。

どちらも大変ですが、採用活動より社内環境の整備、教育のための仕組み作りの方が大変かも知れません。

しかし企業の成長と存続のために経営者自身が率先して社内改革に取り組むほかありません。まず以下の3つに着目して頂きたいです。

①自社で行っている仕事の価値、目指す姿を求職者に語ること(企業理念・目標など)

建設業は「ものづくり」であり、人々の暮らしに根差した無くてはならない仕事です。

これは仕上工事である塗装工事業、防水工事業でも同様です。その仕事の出来は顧客満足に直結していますので、しっかりした仕事は感謝や信頼関係の構築に結びつきます。

「ありがとう」をもらってうれしかった記憶、取引先との強固な信頼関係、紡いできた歴史、大変だったことなども含め、経営者として今後自社をどういう会社にしたいのか、何を一番大切に思っているのか、「夢」を交えながら本気で伝えることが必要かもしれません。

これは全ての層の求職者に必要なことで国の内外、老若男女を問いません。

そもそも、特に若者の中に「この仕事をしたい!そしてこうなりたい!」と考えている人間が何人いるでしょうか?

彼ら彼女らがそういう気持ちを抱けるように建設業の素晴らしさを語って下さい。

②新入社員を任せられるロールモデルがいること(教育係の育成と社長との価値観共有)

2021年2月発行『高校生の就職とキャリア』(リクルートワークス研究所)によると、高校生は「自立や成長」のために働く意識を持って就職先に飛び込んでいくのですが、「4人に1人が最初の会社に10点満点中 0点」をつけており「4割の就職者に仕事の姿勢などについて影響を受けた人がいない」という回答結果が「企業側の受け入れ準備不足」と「ロールモデル不在」を表しています。

そして「9人に1人が最初の会社を半年以内に離職、3年以内に約40%が離職」という結果になるのです。

「ロールモデル」とはお手本、あこがれとなる存在です。高校卒就業者に限らず「ロールモデル」の存在は大切です。

経営者自身でもいいのですが、技術、姿勢、指導力三拍子そろった「かっこいい職人」や「尊敬できる先輩、上司」がいれば最高です。

採用前には必ず短期のトライアル期間を設けて「ロールモデル」となりそうな人材に任せます。

その上でお互いに評価し合うことでミスマッチによる「入社後すぐ退職」も大幅に減る筈です。

そういう人材がいない場合はこれから作りあげるしかありませんが、本人にしっかり説明して経営者と目的・価値観を共有すれば、必ずしも不可能ではないはずです。

③新入社員のキャリアアップを支援すること(知識や技術、資格習得のための研修などの支援、成長に合わせた昇進と昇給など)

入職者は最初は自身のキャリアアップについて具体的にイメージすることはできない筈ですが、仕事をしていくうちに周囲からはもちろん自分でも「こうあって欲しい、こうありたい」という状況が浮かんできます。

その状況に成長が追い付いていればいいのですが、開きが出てくると意欲が失われたり仕事がつまらなくなってしまいます。

「どうなっていたいのか?」ということについては本人と教育係がよくコミュニケーションをとって共有出来ていることが望ましく、会社として支援できればこの上ないことです。

資格を見てみると公的なものでは一級・二級塗装技能士、一級・二級施工管理技士、有機溶剤作業主任者、高所作業車運転者など、また民間資格として建築仕上診断技術者、窯業サイディング塗替診断士、職長・安全衛生責任者教育、足場の組立て等作業主任者、カラーコーディネーターほかの各種資格があります。資格検定は結果はもちろんですが、取得のために努力する姿勢こそが大切で、結果に関わらず頑張りが見えたら褒めるようにすることで本人のモチベーションもアップする筈です。

また外部で開催される研修などの案内は社内回覧して、参加者の有無はさておき「勉強の機会がある」ということは知らしめておきましょう。

【おわりに】

実際に取り組むとなると様々な困難がつきまといますが、もう取り掛からねばならない時期がきています。

建設業界、とりわけ塗装工事、防水工事の魅力がもっと一般に伝わり、技術・技能が正当な高い評価を得て「この業界で働きたい」と多くの若者に思ってもらえると嬉しいです!