2024.06.10

サイディング塗装の注意点とおすすめの塗替えスペックを紹介 ①注意点について

日本人の洋風指向と施工の容易さによって、1990年頃から戸建住宅に急速に普及し始めた「サイディングボード」は、現在の戸建塗替え市場においても大きな割合を占める外装材です。

「窯業系」「金属系」「合成樹脂系」「木材系」などの種類がありますが、何と言っても「窯業系サイディング」が主流である事は申し上げるまでもありません。

近年は高意匠・高機能な商品が市場に出回っており、塗替えに注意が必要な場合も増えてきました。

私の知る限りではサイディングボード専用の塗替え工法は、かれこれ20年前に登場した関西ペイント㈱の「SBポリマー処理」が最初のものだったかと思います。

それ以来サイディングボードの変遷に合わせる様に塗替え仕様も進化して来ました。

アクリル系やウレタン系だったものがシリコン系が主流になり、高意匠サイディング用にはクリヤータイプの改修専用塗材が開発されました。

今回はサイディングボードの塗替えにスポットを当てて、塗替え時の注意点と、お奨め商品についてまとめてみました。

 

クレームは嫌だから、現調は慎重に。 こういうサイディングには注意です!

一昔前まで多かった不具合の原因に「シーラー板に直接上塗りをかけたら、後で剝れてきた。」というものがありましたが、今ではサイディングボードの進化につれて「剝れ」の原因も変わってきている様です。

 

■「直貼りはハイリスク」

サイディングの貼り方が「直貼り」である場合ですが、近年標準である通気構法の様に湿気が逃げませんので、ボードと防水紙の間に結露が起きやすく、そのためボードが吸水して、表層の塗膜に膨れ・剝れ、ボード本体には反りが発生します。

貼り方を確認するにはボード下部と水切りの隙間に定規を差し込んで計る方法があります。

ボードの厚みは通常12㎜から15㎜程度ですので、25㎜以上あれば通気構法の可能性が高いですが、これ以下だと注意が必要です。

「直貼り」だと不具合の起きる可能性が大変高いので、然るべき対応が必要になります。

表面状態と併せてご確認下さい。

 

■「旧塗膜は何か?付着は大丈夫か?」

次に旧塗膜が弾性系塗料など熱によって軟化する塗料の場合です。夏場のボードはモルタルの場合に比べて表面温度で10℃~15℃高くなりますので、塗替え時に濃い色を使うと、塗膜の蓄熱によって旧塗膜の弾性塗料が熱で軟化して膨れが発生する事があります。

淡色ゆえに何とか耐えていたものが、やや濃色にしたために一気に…というケースです。

最近は濃い色を希望する方も多いようですので注意が必要です。

他には旧塗膜の付着力不足により大きなクレームになった事もあります。

「柔らかくないか?」「しっかり付着しているか?」旧塗膜のチェックは必須です。

 

■「どんな表面状態か?」

サイディングの進化は機能性の付与によく表れています。

昨今は光触媒コーティングが施されているものも出回っていますが、撥水処理されているものとともに要注意です。

また、ラッカーシンナーのテストで溶けない場合も注意が必要です。

特に築年数の割に状態が良く、チョーキングなどが見られない場合や、意匠的に凝っている物は、フッソ樹脂や無機コーティングの可能性がありますので、何はともあれ、施主さんに確認してみた方がいいかと思います。

 

■「シーリングは大丈夫?」

何と言ってもシーリング材の状態は重要です。

劣化が進み、ヤセなどがある場合は、サイディングが吸水して反ってくる原因となります。

特に20年以上前のタイプは吸水しやすいと言います。

一度反ってしまったらもう元に戻せませんし、更なる不具合の原因となります。

塗替え時にはシーリング材にも手を入れるべきでしょう。

たまにですが、現調時に部分的に反りが出始めているケースもある様で、この様な場合、施主さんへの注意喚起を行っておかないと、暫くして自社の責任にされてしまうケースも…。