2025.04.14

「船底塗料」について

「船底塗料」について

 

塗料は実に様々な分野で活躍しています。

建築物、道路や橋、自動車、工業製品をはじめとした多くの分野で使われています。

さらに耐熱、遮熱、放射線遮断などといった特殊な機能が要求されるシーンでも、それぞれの塗料が活躍しています。

もちろん船にも塗料は塗られており、昔から船舶、艦艇を問わず塗装されていましたし、

特殊な例になると第二次大戦末期の日本潜水艦には敵駆逐艦からソナー探知されにくいように吸音塗料が塗られていたなどという例もあります。

「船舶用塗料」と聞いて、皆様の頭に浮かぶのは「下側に塗られている赤っぽい色」ではないでしょうか?

これは船の底に塗られていることから「船底塗料」と呼ばれます。

この「船底塗料」に赤色が多いのは、塗料に含まれる成分のひとつ、亜酸化銅に由来するものです。

船底に水生生物が付着することによる汚れを防ぐための主成分が亜酸化銅であり、これ自体が銅色なので赤色系製品が多いのです。

 

今回はこの「船底塗料」についてまとめてみましょう。

Q.船底塗料を塗らないとどうなるのでしょうか?

A.もし船底塗料を塗らなかった場合、以下のような問題が発生します。

① 短期間で大量の海洋生物が付着する

 塗料なしの船底は、1ヶ月程度で海洋生物が付着し始め、半年も経てばかなりの量が堆積します。

 特に温暖な海域では、わずか数週間でフジツボや藻類が船体にびっしりと付くことがあります。

 → 結果: 船の速度が低下し、燃費が著しく悪化します。

② 船の操縦性が悪化する

 海洋生物の付着が進むと、船底がデコボコになり、水の流れが乱れます。

 その結果、船が進みにくくなり、舵の効きが悪くなることもあります。

 → 結果: 船の運航が不安定になり、操縦が困難になります。

③ メンテナンス費用が大幅に増加する

 塗料がない場合、付着した海洋生物を除去するために頻繁にドック入りし、船底を洗浄する必要があります。

 特に、フジツボは通常の水流では取れず、高圧洗浄や手作業で削り落とさなければなりません。

 → 結果: メンテナンスの頻度とコストが増大します。

④ 船体が急速に腐食し、寿命が短くなる

 防食処理なしで海水にさらされ続けると、船体の鉄が酸化して錆びやすくなります。

 特に、溶接部や傷のある部分は腐食が進みやすく、最悪の場合、船底に穴が開いて浸水する危険もあります。

 → 結果: 船の寿命が短くなり、大規模な修理や早期の廃船が必要になります。

⑤ 航行トラブルや環境問題の発生

 船底に大量の海洋生物が付着すると、燃費の悪化だけでなく、船舶エンジンへの負担が増し、故障のリスクが高まります。

 また、海外航行を行う船では、異なる生態系の海洋生物を持ち込むことで「外来種問題」が発生し、生態系に悪影響を与える可能性もあります。

 → 結果: 航行の信頼性が低下し、環境問題にもつながります。

 

まとめ

船底塗料を塗らない場合、以下のような深刻な影響が発生するため、船の運航には不可欠です。

・海洋生物の付着 → 航行速度低下、燃費悪化、メンテナンス費用増加

・船体の腐食 → 船の耐久性低下、修理費用増大

・燃費の悪化 → CO₂排出増加、環境負荷の上昇

・操縦性の悪化 → 航行の安全性低下

・外来種問題 → 生態系への影響

現在の船底塗料は、単なる防汚塗料ではなく、環境負荷を低減しつつ船舶運航を効率化するための高度な技術が使われています。

これにより、船の長寿命化、燃費向上、環境保護が同時に実現されています。

 

Q. 日本の「船底塗料」の歴史と用途、最近の傾向について教えてください。

A.日本における「船底塗料」については以下の通りです。

①船底塗料の歴史

 日本における船底塗料の歴史は、木造船の時代に遡ります。

 江戸時代には、船底に防腐や防虫効果を持つ柿渋や松ヤニが塗られていました。

 これらは船体を保護する目的で使用されていましたが、防汚効果は限定的でした。

 明治時代に入ると、日本でも西洋式の鉄製船舶が普及し始め、それに伴い近代的な船底塗料が導入されました。

 1900年代初頭には、鉛や銅化合物を含む防汚塗料が使われるようになり、特に海藻や貝類の付着を防ぐ目的で開発されました。

 戦後、日本の造船業が急成長するとともに、より耐久性の高い塗料が求められ、各塗料メーカーが研究を進めました。

 高度経済成長期には、国際航路を運航する大型船舶が増え、防汚性能や耐久性に優れた塗料の需要が高まりました。

 1970年代には、有機スズ化合物(TBT: トリブチルスズ)を主成分とした船底塗料が登場し、高い防汚効果を発揮しましたが、

 環境問題が指摘され、2008年に国際海事機関(IMO)の規制により使用が全面禁止されました。

②船底塗料の用途

 船底塗料は、主に以下の目的で使用されます。

 ・防汚

  船底に付着する海洋生物(フジツボ、藻類、貝類など)を防ぐ役割があります。これらの生物が付着すると船の抵抗が増し、

  燃費が悪化するため、塗料による防汚が重要になります。

 ・防食

  海水による腐食を防ぎ、船体の耐久性を向上させます。特に鋼鉄製の船舶は錆びやすいため、塗装が不可欠です。

 ・燃費向上とCO₂排出削減

  船底が滑らかであるほど水の抵抗が減り、燃費が向上します。

  これは二酸化炭素(CO₂)の排出削減にもつながり、環境負荷の軽減に寄与します。

 ・メンテナンスコストの削減

  船底に汚れが付着すると、ドック入りして清掃する必要があり、その費用は高額になります。

  適切な塗料を使用することで、メンテナンス頻度を減らし、コストを抑えることができます。

③最近の傾向

 近年の船底塗料の傾向として、以下のような点が挙げられます。

 ・環境規制の強化と代替技術の開発

  有機スズ化合物の禁止以降、環境負荷の少ない塗料の開発が進んでいます。

  現在は、銅系や亜鉛系の防汚塗料、さらにはシリコーンやフッ素を活用した非スティック型塗料が普及しています。

  これらは生物の付着を物理的に防ぐもので、化学物質の放出を最小限に抑えることができます。

 ・自己研磨型(SPC)塗料の主流化

  航行中に船底の表面が少しずつ削れる「自己研磨型(Self-Polishing Copolymer, SPC)」塗料が主流となっています。

  これは新しい防汚成分を常に露出させる仕組みで、長期間にわたって安定した防汚効果を発揮します。

 ・燃費削減を目的とした低摩擦塗料の開発

  燃費向上を目的に、低摩擦型の塗料が開発されています。

  たとえば、シリコーン系の塗料は極めて滑らかな表面を形成し、水の抵抗を減らす効果があります。

  これにより燃費が向上し、CO₂排出削減にもつながります。

 ・バイオマス由来の塗料の研究

  化学合成塗料の代替として、バイオマス由来の原料を使用した環境配慮型の塗料が注目されています。

  これにより、製造過程や使用後の環境負荷をさらに低減することが可能になります。

 ・AIやデータ解析を活用した塗装管理

  船舶の運航データや環境条件をAIで分析し、最適な塗料の種類や塗り替え時期を提案する技術が進展しています。

  これにより、船主は最適な塗料を選択し、メンテナンスコストを削減することができます。

 

今後の展望

 

船底塗料は、船舶の効率運航と環境負荷低減の両面で重要な役割を果たしています。

今後は、より持続可能で環境に優しい塗料の開発が進むと考えられます。

特に、化学物質を使用しない表面加工技術や、生物の付着を根本的に防ぐ新素材の研究が期待されます。

また、船舶の運航においてデジタル技術の導入が進む中、塗料の選択やメンテナンスを最適化するAIの活用がさらに拡大するでしょう。

これにより、燃費の向上、CO₂排出削減、メンテナンスコストの削減といったメリットがより大きくなると予想されます。

 

日本は造船業界において世界的な競争力を持つ国であり、船底塗料の分野でも先端技術の開発が進んでいます。

今後も環境負荷の低減と経済性の両立を目指し、持続可能な塗料技術の進化が期待されます。

 

「船底塗料」

関西ペイントマリン㈱ 

プラドールZ 👉プラドールZ+専用シンナー | 業務用塗料・塗料用品の専門サイト ペイントワン

 最高級シリル系加水分解型のFRP船用船底塗料で、暖海域でも高い防汚性能を発揮します 

 

中国塗料㈱ 

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  特殊親水性ポリマーの作用により、係留中でも防汚剤が少しずつ溶け出し、船底の汚れを防止します。 

 ニューマリンゴールドDXプラス 👉ニューマリンゴールドDXプラス+カモメFRPプライマー+専用シンナー | 業務用塗料・塗料用品の専門サイト ペイントワン

  高い防汚性能を持つ船底塗料で、長期間にわたり船底を清潔に保ちます。

 

日本ペイントマリン㈱ 

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  FRP船や木船向けに開発された加水分解型セルフポリッシング防汚塗料で、長期間にわたり安定した防汚性能を発揮し、

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  優れた防汚性能: 加水分解型のセルフポリッシング作用により、塗膜が滑らかに溶け出し、常に新鮮な防汚面を維持します。